海辺つくり研究会とは



設立趣旨

 大小7,000を越える島々からなる多島海を形成する日本の自然は、四季折々に様々な表情を見せ、変化に富み世界に誇るべき美しさを有している。
 遠い昔この国に海を渡って移り住んだ私たちの祖先は、自然にかまうことが得意であると言われ、自分をとりまく自然環境に作為を加え、美しい田園風景、里山、白砂青松といったふるさとの原風景を作り出してきました。
 こうした美しい風景を作り出してきたのは、自然から様々な恩恵を受けたり、厳しい自然災害から自分たちの暮らしを守るためでした。
私たちの先人は、人と自然との関わり合いの中で、自然の恵みを享受しながら、生き物にあふれ豊かで美しい大地と海辺を数千年にわたり維持し、継承してきたのです。

 しかし、私たちが近年大量生産、大量消費による経済的な豊かさを享受する一方で、身近な自然は失われ、海辺の風景は一変する事態となっています。
 川や海に様々な施設が建設され、山から海へと流れる土砂の移動経路は分断され、海岸の砂浜は後退し、ブロックや護岸で覆われ、近寄りがたい海辺に変貌してしまった地域も少なくありません。
 また、内湾の海は埋め立てられ、最終的には海に排出される汚濁物質などによって、以前のような豊かさが失われてしまった海も各地にみられるようになりました。

 私たちは、こうした現状を深く認識し、昔のような自然や海辺を取り戻し、自然と人との良好な関係を再び作り上げていくことが、未来に美しい日本を残していく使命をもった日本人全体の課題の一つであると考えます。
 そしてそのための理念こそ、かつて私たちの先人が実践してきた自然と人との関係”上手に自然にかまう”生き方ではないかと考えます。
 私たちは1999年より有志が集まり、沿岸域の環境問題について、様々な側面から研究や情報などの交流を行ってきましたが、上記の視点から単に研究を行っていくだけなく、海岸に働きかけながら新しい沿岸域の自然環境を創造していくことが必要との認識に至りました。

 そこで、2001年に産官学民を問わず幅広く同志を募り、様々な経験、知識、技術を有するものたちを会員として「海辺つくり研究会」を設立しました。
 以来、国内の沿岸域を中心に、
 1,海の自然に学ぶ、
 2,先人の知恵に学ぶ、
 3,多くの市民から新しい知恵を引き出す、
 4,工学的技術と調和した新たな環境創造技術やその進め方について研究する、
 などの活動を行い、良好な海辺環境の保全・再生・創出に貢献しています。
 また、多くの地域の市民グループと積極的に連携し、支援活動を行うこと、毎月の研究会、年に1~2回の講演会・見学会を実施し、沿岸域の自然環境保全に関する普及啓発および人材育成などの活動を行っています。

 本会においては、沿岸域における良好な自然環境の保全・再生・創出に関する事業を行い、自然と共生する海辺つくりを積極的に推進しながら、地球環境の保全に寄与する所存です。



設立の目的

私たちは、沿岸域環境の保全・再生・創出や自然と共生する海辺つくりに関する事業を、先人の知恵や多くの市民の新しい知恵に学びながら、積極的に推進し、地域の振興や地球環境の保全に貢献することを目的に活動しています。



事業内容

 目的を達成するため、調査研究・研究開発活動、行政と市民のパートナーシップ構築のためのインタープリターとしての活動、人材育成・普及啓発活動などを行っていますが、具体的な活動としては、次のとおりです。

 1. 調査研究・研究開発
  (1) 海辺つくりに関する情報の収集、公開、および情報データベースの構築、公開
  (2) 海辺環境のモニタリング、調査研究、計画、評価および情報公開
  (3) 海辺環境の保全・再生・創出技術の開発と普及

 2. インタープリターとしての活動
  (1) 海辺つくりに関する政策の立案協力・提言
  (2) インタープリターとしての専門家の派遣協力
  (3) 情報共有のためのツール提供

 3. 人材育成・普及啓発活動
  (1) 海辺つくりに関する研究交流会や市民、子ども向け環境教育イベントの開催
  (2) 海辺環境の保全・再生・創出に関する国際協力および国内各地域との連携の推進
  (3) ホームページ(機関紙)による情報公開
  (4) シンポジウム・セミナーの開催
  (5) 事業成果の出版、販売



理事会

古川 恵太(理事長) 講師紹介ページはこちら>
昭和38年生まれ、長く、海辺の自然再生のための調査・計画・管理についての研究に従事するとともに、沿岸域総合管理の推進、海洋ガバナンスや生態系保全、地球環境変動など様々な視点から海洋政策全般についてのプロジェクトに参画してきた。「楽しい市民調査」を目標に、朝潮運河いきものルネサンス事業や、東京湾を対象とした江戸前ハゼ復活プロジェクト、東京湾環境一斉調査など主体に活動している。
著書(共著)に、The Environment in Asia Pacific Harbours (Springer)、自然再生:生態工学的アプローチ(ソフトサイエンス社)、海の自然再生ハンドブック(ぎょうせい)、海洋生態系調査マニュアル(海洋調査協会)等がある。


木村 尚(理事) 講師紹介ページはこちら>
昭和31年神奈川県横浜市生まれ66歳。原体験の海は石川県能登半島。うまい魚と酒にはめっぽう弱い。東京湾を子どもたちが泳げる豊かで美しい海にしたいと考え、全国の仲間とつながりながら、さまざまな市民活動を行っている。好きな魚はフウセンウオ。夢は東京湾を世界遺産にすること!
主な著書として「都会の里海・東京湾」(中公新書ラクレ)他がある。現在、日本テレビ系「ザ!鉄腕!ダッシュ!!ダッシュ海岸をつくりたい」にレギュラー出演中。他、平成26年11月放送のNHK Eテレの東北発未来塾に塾長として出演した。


森田 健二(理事)
昭和32年東京都品川区生まれ、幼少期を高度経済成長下で汚染・汚濁した環境下で育つ。映画で観た南太平洋の海中世界や郊外の海山川での自然体験との格差に愕然とし、海辺の自然再生を志す。社会人となる際に海洋環境調査コンサルタントを志望、入社からはほぼ一貫してアマモ場再生に関わる調査研究に従事し、2000年代からはお台場海浜公園でアマモ、ノリ、アサリの育成を通じた環境教育や海水浴イベントにも関わっている。
水産庁や全国自治体のアマモ場造成(再生)指針をまとめ、著書(共著)に「ミチゲーションと第三の国道空間づくり」共立出版、「東京湾 人と自然のかかわりの再生」恒星社厚生閣がある。


菅家 英朗(理事)
福島県で生まれた通りすがりのサラリーマンがアマモの活動を始めて十余年。
趣味と実益、伊達と酔狂で活動を続けています。


鯉渕 幸生(理事)

神奈川県横浜市生まれ。幼少期は鎌倉の海に自転車で泳ぎに行ったり、野山を駆けまわったり、海水魚を飼育していました。

東京大学准教授、メリーランド大学客員教授を歴任し、現在は米国標準技術研究所、中央大学研究開発機構教授、Recora LLC 代表取締役CEOを兼務して、主に米国を拠点に沿岸環境に関する研究開発やコンサルタントを行っています。


増田 龍哉(理事)
宮崎生まれの熊本県民。
人々が海辺で楽しむ、働く風景と甘い九州醤油が好きな釣り好きおじさん。
大学教員時代に海辺の自然再生をテーマにした研究をやっていたつながりで、上京後に海辺研に入会。天候不良は偶然ですww


岩井 克巳(監事) 講師ページはこちら>
昭和40年生まれ。
大学を卒業後34年間、主に海域環境改善技術の調査・コンサルタントの仕事を行ってきた。NPO活動を始めたきっかけは、環境アセスメントの現地説明会での一言「専門用語を並べられてもわからん!!」。一般の方にわかりやすく現状を伝えていくことの重要性を知り、体験を主体とした様々な活動を行っている。
現在は、大阪の阪南市を中心とした泉州地域で、アマモ場再生を核とした海洋教育、カキ小屋などを核とした浜の活力再生(漁業の活性化)を指導・実践。
「全国アマモサミット2018in阪南」実行副委員長、「G20大阪サミット配偶者プログラム2日目」現地コーディネーター(小学生による発表)のほか、現在は阪南市海洋教育推進協議会委員を務めている。


鈴木 覺(理事)


大浦 佳代(理事)